丘のうえから
高次脳機能障がいの方々への支援の輪を広げていきます
平成27年7月6日
「高次脳機能障がい」をご存知ですか。当事業団は、昨年度から「高次脳機能障がい及びその関連障がいに対する支援普及事業」を大阪府から受託しています。この事業は高次脳機能障がいの方やご家族が身近な地域において、相談や支援を受けることができる体制を整備するために、地域の関係機関のネットワークの構築をめざすものです。南河内圏域の拠点機関として、ネットワーク会議などを通じて普及事業に取り組んでいます。
さて、高次脳機能障がいとは、病気(脳梗塞、脳出血など)やけが(交通事故など)などが原因で、脳が損傷することによって起こる言語や記憶、注意などの認知機能の障がいです。 主な症状としては、①新しい情報を覚えたり、必要なときに思い出せない記憶障がい②注意を向けて集中を維持することが難しい注意障がい③物事を計画的に進めることが難しい遂行機能障がい④感情のコントロールや意欲が低下する社会的行動障がい、などがあります。
1990年頃から、交通事故などで脳に損傷を受けた人が外傷が軽いため身体障がい者手帳の交付がされず、適切な医療やリハビリ、福祉サービスが受けられないという問題が明らかになってきました。その後、診断基準が作成され、精神障がいの中に含まれるようになりました。しかし、まだまだ、この障がいへの正しい理解や適切なサービスの整備が進んでいるとは言い難い状況です。
より多くのみなさんに理解していただけるように、関係者が連携を深めながら啓発活動に取り組んでいく必要があると感じています。
また、この事業を通じて、高次脳機能障がいの方々が必要なときに適切なサービスを受けることができるように、支援の輪を広げていきたいと考えています。ご支援、ご協力よろしくお願いいたします。
「変わらないもの」
平成27年6月29日
今、コロニーでは、新しい施設建設のため毎日重機の音が響き渡っています。診療所跡では新施設の建築工事が、長年利用者の日中活動の場として活躍してきた授産所(セルプ)は撤去工事が、この間の構想を一気に進めるかの様なスピードで日々その姿を変えています。
私が入職した33年前は、名前は知らないけれど、「おはようー」「行ってらっしゃい」「お帰りー」「げんきー」といった挨拶が、道行く利用者から賑やかなくらい聞かれ,人と人の触れ合いがあちらこちらでありました。多くの利用者は地域に生活の場を変え、今では利用者の往来もめっきり少なくなり、その声もあまり聞かれず目に映る利用者やコロニーの風情は日々変化しています。
でも、変わらないものもあるのではないでしょうか。それは、この47年間に支援に携わった3,000人以上の先輩職員が、そして、今、直接支援に携わる約1,500人の職員の思いである「ともに生きる心を育み、ともに歩む社会の実現」理念そのものではないかと思います。
理念は平成20年に制定されたものですが、47年前も、33年前も、そして現在も表現こそ違えど、「ともに生きる」この思いは変わらず引き継がれてきたのではないでしょうか。
私たちが、共感を持ってともに歩み、支えあい、人としてつながる力を育むことが福祉の原点・基底であるあると考え、その“心”をもって歩んでいきます。誰もが自分らしく誇りを持って生きていくことができるよう、それを支えるユニバーサルな社会への改革に取り組む、その志をもってこれからも一緒に歩いていくことを宣言します。(平成20年理念制定時宣言の一部を抜粋)この宣言の意味を今一度考え、日々の業務を遂行していくことを改めて私は宣言します。読者の皆様も“ともに生きる”とは“福祉”とは、その“心”とは、何なのかを改めて考える機会持ってみるのはいかがでしょうか。
「街に暮らす」
平成27年6月22日
グループホームが制度化されるにあたり、「グループホームとは、障がいのある方の地域における生活の場のひとつであり、普通の場所で普通の生活をするのが当然という考えにたつものである。すなわち、人としての社会的位置は何ら特別のものではないということである。」と提唱されました。
地域で障がい者と共生するスウェーデンの実態、日本の現状や先駆的な試みを紹介したビデオ「街に暮らす」が制作発表されてはや20年が過ぎ、この間、グループホームの制度は幾度となく改定され、「街に暮らす」形態も多様化してきました。利用要件にあった“就労していること”の削除、公営住宅の利用あっせん、家賃補助、また、利用者の人権人格を擁護するため、虐待や差別を防止禁止する法律が施行され、利用者の「街に暮らす」は進みました。一方で、消防法などの関係法令の改正により、安全の確保は大切なことですが住居の確保にも苦慮し、事業の停滞が気がかりとなります。また、利用者の高齢化が進む中で、“介護保険サービス優先”と言われる65歳問題により、障がいのある方の「街に暮らす」が根底から覆ってしまうかも知れません。
この制度の歴史はまだまだ短いですが、変化の大きな歴史でもあります。今後も、さらに変化していくかも知れません。今、改めて「街に暮らす」を支援することを考えてみて、“普通の場所で普通の生活”を支えることが事の始まりであり、考え方の原点であったことを確認しました。